ニヒ・スンバ 〜引退馬と過ごせる秘境リゾート〜
世界中から観光客が集まる大人気リゾート地、インドネシア・バリ島。
ここから1時間ほどの場所に浮かぶスンバ島に「世界一のホテル」と称された、引退馬と過ごせる秘境リゾートがあります。
<秘境リゾートの、ホースパラダイス>
高級リゾートホテルである「ニヒ・スンバ」では、どこまでも続く青い海、晴れわたる空、そしてそのビーチを自由に走る馬の群れを見ながら、最高級リゾートが味わえます。
近くの厩舎に住む17頭の馬たちは「サンダルウッド」と呼ばれる、このスンバ島原産の品種。足が速く、体が丈夫で、優れたスタミナも備えており、日本の道産子ほどの大きさです。
馬たちは、毎朝ホテルの目の前に広がるビーチに放たれ、思いのまま自由に走り回ります。
ホテル宿泊者は、リゾート施設やビーチアクティビティを楽しむ以外に、馬の群れと一緒にビーチを歩いたり、ターコイズブルーの美しい海で馬と一緒に泳いだりすることもできます。
この贅沢な体験こそが、ホース・パラダイス(馬の楽園)と呼ばれ、世界中の馬好きが「死ぬまでに一度は行ってみたい」と願う馬の聖地である理由です。
これほどまでに自由で幸せそうな見える馬たちですが、実はここにいる馬のほとんどが島内で保護された引退馬なのです。
<スンバ島と馬>
これには、スンバ島の歴史と信仰が関係しています。
スンバ島には先祖から代々伝わる伝統信仰が残っており、馬が重要な役割を持っています。
毎年2月に馬を使った催事「パソラフェスティバル」が開催され、島民が馬に乗って互いに槍を投げ合う、独自の伝統競技を行います。これには島内の豊作を祝う意味があり、島で一番の大イベントとして島中が一気に盛り上がります。一方で、加齢や怪我を理由に、この伝統競技に使われない馬も出てきます。
ニヒ・スンバにいる馬のほとんどは、この催事で使われなくなった引退馬なのです。
日本のように競馬場でのレースを引退したサラブレッドではありませんが、伝統や文化を共に歩んできた「命ある生き物」であることに変わりはありません。
リゾート施設であるニヒ・スンバのように、一見馬と全く関係ないような業種に視野を広げることで、新たに引退馬の活躍の場が見つかるかもしれません。
参考:https://equestrio.com/reportages/nihi-sumba-a-horses-paradise
記事:YURIE KONO
大学でホースセラピーを学び、現在は馬の本場ヨーロッパでホースジャーナリストとして活動中。