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海外の引退競走馬に関する、調査データについて

競走馬として生まれたサラブレッドは、この世に誕生した瞬間から常に「引退」と隣り合わせの生活をしています。順調に競走馬としてデビューをしても、現役期間はおおよそ2〜3年。その後約20年続く「馬のセカンドキャリア」が課題になっています。今回は、北米とオーストラリアにおける引退競走馬に関する調査データをご紹介します。各国での引退馬事情はどのようなものなのでしょうか。

<北米の引退馬事情>

競馬大国・アメリカでは毎年20,000頭以上の競走馬が生産され、サラブレッド生産頭数は世界一を誇ります。2014年、引退馬の再調教を行うアメリカの団体が引退馬に関する調査を行いました。調査では、アメリカ・カナダに住んでいる引退馬のオーナー4,200人を対象に、現在所有している引退馬をどのように手に入れたか?を聞き取りました。すると「競走馬主から直接引き取った」が34%、「競走馬主以外の個人所有者から引き取った」が31%、「非営利団体やレスキュー団体から引き取った」が13.5%、「再調教済みの馬を購入した」が9%、「セリで購入した」が2%という結果になりました。この事から、北米では引退馬がセカンドキャリアを掴むためには、馬主もしくは個人の役目がかなり大きく、レース引退直後のセリが活用される割合は少ないことが分かります。一方、競馬を引退した馬がどの程度の割合でどこに移ったかについて正確な調査はありません。

<オーストラリアの引退馬事情>

オーストラリアで行われた調査によると、毎年約13,000頭生産されるサラブレッドのうちレースに登録されるのは約11,000頭、最終的に繁殖馬になるのはたった約2,500頭と言われています。つまり、毎年約8500頭ものサラブレッドが競馬業界から引退を余儀なくされているのです。中には引退馬を馬肉に加工した後に食用やペットフードとして国外に輸出しているとの見方もありますが、競馬業界は「食肉になる競走馬はほとんどいない」と強調するなど、引退馬に関しては「事実すら見えていない」という状況にも感じられます。

<日本の引退馬事情>

一方、日本では毎年約7,000頭のサラブレッドが生まれ、毎年約5,000頭が競馬業界を引退して乗馬クラブに引き取られていると言われています。しかし、実際にはその後行方不明になることも多く、国内でも同様に正確な行方が追跡できていません。

いずれの国でも競馬産業の歴史は長いものの、引退馬のセカンドキャリアに目が向き始めたのは比較的最近のことです。各国で調査内容に差があるものの、競走馬の行方を追跡できていなかったり意見が偏ったデータが出ていたりと、世界的に見ても引退馬の正確な現状を掴めていないのが現状です。

参考資料:THE HORSE

記事:YURIE KONO

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